湯は、人を生かす。
南阿蘇の秘湯「地獄温泉」は、かつて熊本藩の武士と僧侶のみが入浴できる特別な場所だった。明治期に一般開放されたことで、庶民の湯治場として栄える。しかし湯治文化の衰退により宿の数は減り、とうとう一軒だけに……。それが「青風荘.」である。かつては「清風荘」という屋号だったが、2016年に熊本地震と直後の豪雨により半壊。4年の歳月をかけて全面再開した際、水の被害が二度と起こらないことを祈念して清のさんずいを取り、最後にピリオドをつけて「青風荘.」と改名した。
日帰り入浴も受け入れる露天風呂は、湯の湧く音がちゅんちゅんという鳴き声に似ていることから「すずめの湯」と呼ばれている。加温・加水をすることなく源泉のまま足元湧出している強酸性硫黄泉。しかも熱湯とぬる湯、それぞれの浴槽は、違う源泉からそれぞれ適温の湯が湧いているのだから、まさに奇跡というしかない。
温泉は、地球からの授かりものである。その恩恵と引き換えに、火山大国に暮らす我々は震災から逃れることはできない。必要なのは感謝と覚悟。復興した白濁の湯に浸かりながらそんなことを考えた。ここは人を生かすための場所。湯治文化を次世代に繋いでいくためには、新しい挑戦が必要だ。デザイン、料理、そして着衣混浴というスタイル……。宿に200年以上も伝わる巻物には、こんな入浴の掟が記されていた。
「湯は皆のもの」「自然からの贈り物」「自分のこと考える」「人のこと考える」「全てを見つめ直すいい機会」。
Text by Kundo Koyama
Photographs by Alex Mouton
地獄温泉 青風荘.
- 〒869-1404 熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陽2327
- TEL : 0967-67-0005
- URL : http://jigoku-onsen.co.jp
- 阿蘇くまもと空港から、クルマで約40分の場所。
料金:日帰り湯 一般 ¥2000、中〜大学生¥1800、小人¥800
宿泊 (1名1泊朝食込み) 本館¥24,200、離れ¥30,800
営業時間:10時~17時(最終受付 15時)
定休日:火曜日(祝祭日営業)