湯の記をはじめるにあたり…
茶が道になったように、日本特有の入浴文化も道になるかもしれないと直感し、それを湯道と名付けた。自分が生きているあいだにそれが結実するとは思っていない。遠い未来の記憶に「湯道」が刻まれたならそれでいい。自分の人生の足跡がその一助になるのなら本望だ。
湯道を世に問い始めてから2年が過ぎた。まずは作法らしきものを作ってみたものの、「湯道は作法にあらず、湯に向かう姿勢なり」という結論を得た。形ではなく心。湯に浸かり何を思い、何を得るかが、大切なのだ。形はいずれ自然と生まれてくるに違いない。とするなら、湯道の本質にたどり着くには、この国に存在するいい湯に浸かり、そこで閃いた文言を積み重ねてゆくことが一番の近道だと思った。
日本にはたくさんの素晴らしい温泉が存在する。江戸から続く銭湯という文化も守らねばならない。そして各家々にも他の国にはない特有の機能を備えた心地良い風呂が設えられている。あらゆる湯に浸かり、思惑を巡らせることで湯道が何たるかを私は知ることになるであろう。
平成30年
小山薫堂

湯は、
日常の雑念を浄化する。
50
東京・千代田区
- アマン東京
湯は、漢を試す。
49
栃木・那須温泉
- 鹿の湯
- 薄井和夫さん
湯は、
小さな命を優しく見守る。
48
栃木・那須町
- アートビオトープ那須
- 北山ひとみさん
湯は、遊び心を継承する。
47
神奈川・葉山町
- 葉山加地邸
- 武井雅子さん、神谷修平さん
湯は、
伝説をいまに伝える。
46
奈良田温泉
- 白根館
- 深沢光司さん
湯は、
己を見つめる鏡となる。
45
宮城・仙台市
- 慈眼寺の湯
- 塩沼亮潤さん
湯は、
挑戦心を駆り立てる。
44
東京・墨田区
- 黄金湯
- 新保朋子さん、卓也さん
湯は、
色褪せた記憶を彩色する。
43
熊本・三角町
- 地域間交流施設
金桁温泉 - 守田憲史さん
湯は、
夫婦の夢に花を咲かせる。
42
静岡・東伊豆町
- 夢花
- 半田満さん、宣子さん
湯は、自然からの
おくりものである。
41
群馬・中之条
- 尻焼温泉