湯の記をはじめるにあたり…
茶が道になったように、日本特有の入浴文化も道になるかもしれないと直感し、それを湯道と名付けた。自分が生きているあいだにそれが結実するとは思っていない。遠い未来の記憶に「湯道」が刻まれたならそれでいい。自分の人生の足跡がその一助になるのなら本望だ。
湯道を世に問い始めてから2年が過ぎた。まずは作法らしきものを作ってみたものの、「湯道は作法にあらず、湯に向かう姿勢なり」という結論を得た。形ではなく心。湯に浸かり何を思い、何を得るかが、大切なのだ。形はいずれ自然と生まれてくるに違いない。とするなら、湯道の本質にたどり着くには、この国に存在するいい湯に浸かり、そこで閃いた文言を積み重ねてゆくことが一番の近道だと思った。
日本にはたくさんの素晴らしい温泉が存在する。江戸から続く銭湯という文化も守らねばならない。そして各家々にも他の国にはない特有の機能を備えた心地良い風呂が設えられている。あらゆる湯に浸かり、思惑を巡らせることで湯道が何たるかを私は知ることになるであろう。
平成30年
小山薫堂

湯は、心に恩を刻む。
68
山口・長門市
- 長門湯本温泉 恩湯
- 大谷和弘さん
湯は、
四季を愛でる種となる。
67
三重・志摩市
- AMANEMU
湯は、
茶とともに幸を編む。
66
岐阜・中津川市
- ランプの宿 渡合温泉
湯は、人生を磨く。
65
沖縄・沖縄市
- 中乃湯
- 仲村シゲさん
湯は、厳しい自然を
感動に変える。
64
北海道・富良野
- 十勝岳温泉 湯元 凌雲閣
湯は、街の灯りとなる。
63
東京・墨田区
- 電気湯
- 大久保勝仁さん
湯は、縄文の扉を開く。
62
神奈川・川崎
- 志楽の湯
湯は、夫婦の愛を育む。
61
群馬・桐生市
- 上の湯
- 津久井美紅さん、篤さん
湯は、心を空にする。
60
栃木・日光
- 中禅寺 金谷ホテル
湯は、旅人と住人を結ぶ。
59
広島・尾道市
- yubune