歴史とロマンあふれる温泉

北海道帯広市の「ローマの泉」は１９７６（昭和５１）年に開業した温泉銭湯。当時の雰囲気をそのまま残したノスタルジックな施設は、レトロブーム、サウナブームも相まって幅広い世代から支持されている。

館内の廊下には、いくつものドアが。扉を開くと、個室の風呂「家族風呂（ファミリーバス）」が広がっており、温泉を貸し切りで楽しめる。全１４室のうち、３室のみ「サウナ付き家族風呂（ファミリーサウナ）」が併設している。なぜ個室の風呂が並んでいるのかは、現経営者である佐藤さん一族にもよくわかっていない。歴史とロマンあふれる温泉だ。

湯は地下１，２００メートルから汲み上げられる、炭酸や硫黄などの成分を含む植物性モール天然温泉。「モール温泉」は、太古の植物が蓄積した亜炭層あたんそうを通って湧き出るアルカリ性の温泉で、日本では主に帯広や十勝で湧出。世界でも希少な泉質で、２００４年には北海道遺産にも選定された。ローマの泉では加温・加水は一切せず、２４時間源泉掛け流しをしているため、気泡が多く新鮮な湯で体を休めることができる。

「お客様からは、『レトロだね』『昭和から変わらないことが落ち着く』とよく言われます。看板の字体も古いままですが、最近ではインスタに載せてくださるお客様も増えました。お部屋のタイルも昔からのなので、レトロ好きな方はそういうところにも注目してくださるようですね。」

週に数回、番頭に立つ北浜慶美さん。近隣からはたくさんの常連が訪れ、「毎日言葉をかけてくださることが嬉しい」と語る。コロナ禍以前は道外からもたくさんお客さんが訪れており、その交流がまた活力になっている。
「帯広にはモール温泉が多いのですが、『いろいろと回ったけど、ローマの泉がいちばん良い！』と、お客様におっしゃっていただけた時は嬉しかったですね。何より、お客様に喜んでいただけることがいちばんです。」

Text by Chako Kato
Photographs by Alex Mouton