湯道百選

36
石川・金沢

KAI-TOU

KAITOU

湯は、
文化を遊ぶ軸となる。


文化はつくり手の一方的な才能だけで熟成されるものではない。それを楽しむ使い手の感性がその未来を決める。

 金沢の古き良き情緒を残す「ひがし茶屋街」の外れに、「KAI(回)」と名付けられたものづくりの実験場がある。一流の職人と稀代の粋人がここで邂逅し、粋な遊びや芸術作品の種を蒔く・・・
そんな文化創造の空間である。


これまで数々の数寄屋建築を手がけてきた三浦史朗氏が、木工芸を現代アートにまで昇華させる職人・中川周士氏に声をかけ、「KAI」を究極の湯室に仕立て上げた。明治31年築の町家の外側だけを残し、二階に茶室、一階に半畳の囲炉裏部屋と風呂のある坪庭を造営。小舟のかたちをしたさわらの湯舟は、もちろん中川周士の芸術的な仕事によるものだ。ちなみに、この湯舟は、釘を一本も使わず完全な組み立て式。さらに、螺旋階段で繋がる上下の空間も同じく組み立て式になっている。つまりこの空間全体が、茶と湯をどこでも愉しめる移動式湯室になっているのだ。そして、亭主の趣向によってこの空間は無限の遊び場となる。

中川木工芸比良工房の中川周二氏。手に持っているのは、湯道具「狐桶」。

二階で茶を飲んだ後、一階の風呂に浸かり、そして囲炉裏を囲んで極上の肴をつまみながら美酒を酌み交わす。文化という建前はいつの間にか消えて、幸福創造装置となるのだ。
 コロナ騒動がまだ始まっていなかったこの日、湯会の亭主を務めた三浦氏は、金沢で一目置かれている日本料理「東山和今」の今井友和料理長を呼び、囲炉裏で蛍烏賊を焼かせた。

 茶と湯と酒と美食・・・「にほんあそび」の原点をここに見た。


目の前で料理を振る舞うのは、日本料理「東山和今」の今井友和料理長。
春の訪れを感じさせる、旬の食材が並んだ。


Text by Kundo Koyama
Photographs by Alex Mouton

KAI-TOU

  • 〒920-0831 石川県金沢市東山2丁目8-25
  • URL : https://kai36.jp/story5/
  • 時間:10:00〜17:00
    定休日:火曜
    ※予約制、展示のみで入浴は不可。

金沢駅からクルマで約10分、伝統的建造物群保存地区のなかにある一軒の町家。古き良きものと新しいアイデアが入り交じる唯一無二の空間は、建築家三浦史朗氏の自由な発想から生み出された。「KAI」では2ヶ月毎に展示替えがあるため、展示内容の確認・予約は、訪れる前に必ずHPを確認のこと。「KAI-TOU」の展示は、現在は終了している。