未来を照らす銭湯の灯火

銭湯は「街のへそ」である。人々の社交場であり、街の文化や歴史を伝える拠点にもなる。「御所宝湯」の暖簾をくぐり、改めてそう思った。そもそも「宝湯」の創業は大正5年。100年近く御所の人々に愛されてきたが、店主の高齢化により2008年に廃業した。その14年後に奇跡が起こる。銭湯が消えてしまった御所市の役所の意向を受けて、「narrative」という会社が「宝湯」を一般公衆浴場として完全復活させたのだ。しかも、企画から資金調達、運営までを担っただけでなく、他社と連携して「湯守番頭会」という銭湯文化を持続可能にする組織までつくってしまった。

JR御所駅から徒歩3分。復活を支えた会社「narrative」は銭湯の持続可能な経営を支援する取り組み「湯守番頭会」を他社と連携し設立。第4回湯道文化賞で湯道創造賞を受賞。
当初、銭湯は赤字覚悟で運営し、周辺に同時開業する宿と料理店で売り上げを補う算段を立てていた。だがいまや、予想を大きく上回る客が押し寄せている。昔のタイルはそのまま残し、薪とガスのハイブリッドで湯を沸かす。熱湯とぬる湯、水風呂の3つの浴槽を設え、外気浴スペースを備えたフィンランド式サウナも導入。人口2万3千人の市は高齢化が進んでいるが、この銭湯に若者や海外からの観光客、地元の高齢者が集い、街の社交場になっている。しかも、近隣の大学生のほか、東京から移住してきた60代の男性まで幅広い人がアルバイトとして働いてるから驚く。

内装には古民家の建具を使用。前身の「宝湯」の面影を残しつつ番台に代わるロビー方式など新たに採用した。オリジナルグッズも豊富。
銭湯には人を引き寄せ、人を和える力がある。「御所宝湯」に、銭湯の明るい未来を見た気がした。
Text by Kundo Koyama
Photographs by Alex Mouton
御所宝湯
- 〒639-2216 奈良県御所市御国通り2-361-5
- TEL : 0745-49-0823
- URL : https://www.gosemachi.com/takarayu/
- 営業時間:14時~22時(月~金)、11~22時(土、日、祝) 休 第2・第4水
料金:一般¥530、中人(6歳以上12歳未満)¥200、 小人(6歳未満)¥100、サウナ¥370