湯道百選

74.5
広島・廿日市

岩惣

IWASO

宮島の
自然と歴史に触れる宿。


 厳島は、“神をいつき祀る島”というのが語源で、かつては島全体が御神体として信仰されていた。いまも “神の島”と呼ばれているその場所で、明治時代の頃から営業を続けているのが旅館「みやじまの宿 岩惣」だ。現在の女将は、七代目の岩村玉希さん。広島の出身で、「岩惣」に来るまでは宮島に宿泊したこともなかったが、暮らし始めてその自然の豊かさに驚いたという。
「それまでは街の方に住んでいて四季の移り変わりもそこまで感じることもなかったのですが、宮島は日ごとに違いますね。冬に向かう時も、1日ごとに寒くなっているなと思います。
『宮島はいつの季節がいいですか?』とよく聞かれるのですが、いつとは言い切れないくらい全部の季節が良くて。私はやっぱり5月の新緑の時期が好きですね。冬で葉っぱが全然ないところから、ぐんぐん日ごとに出てくるのがわかるくらい、新緑は本当に美しいです」


 岩惣は国立公園である紅葉谷公園の敷地内にある。本館の大浴場は浴槽の目前に森林が広がり、目でも季節を感じることができる。発見されたあたりが若宮ヶ原と呼ばれていたことから、源泉は「若宮温泉」と名付けられた。地下5メートルの水源にラドンが含まれていることがわかり、それを源泉として引っ張ってきたことが始まり。先々代の女将が、井戸から汲んだ水を使うと肌がスベスベになることに気がつき、調査して発見につながったのだとか。温泉もまた、岩惣の長い歴史の中で受け継がれてきたもののひとつになっている。
「本館の大浴場の前がちょうど山になっているので、お風呂に入りながら、そこの前を鹿が通ったりするんです。うちの大浴場はすごくおすすめですね」


女将の玉希さんが仕事にやりがいや喜びを感じる瞬間は、やはり宮島の自然に触れる時だという。
「夕日が沈むところとか、朝日が昇るところを見ると、本当に神の島だなと思います。鹿をはじめ、自然の動物たちもいますし。あとは真っ白いたぬきが山の方に住んでいて、そのたぬきを見るといいことがあるという、神様の島らしい伝説があります。
温泉地は意外と外で楽しむものがあまりないこともありますが、宮島は出かけるところがたくさんあるので、うちは『できるだけ出かけてください』とお客様にも言っています。旅館の中で過ごすというよりも、宮島を楽しむために泊まる、という感覚があるかもしれません。岩惣ではゆっくりしながら、自然を楽しんでいただきたいですね」

今回お話をお伺いした、岩惣の七代目の女将 岩村玉希さん。


Text by Chako Kato
Photographs by Kei Sugimoto

岩惣

  • 〒739-0522 広島県廿日市市宮島町もみじ谷
  • TEL : ‭0829-44-2233
  • URL : https://www.iwaso.com/
  • ¥25,450〜
    (2食付き、2名1部屋利用時1名料金)

宮島のフェリー到着港からクルマで約5分の場所の渓流沿いに岩惣はある。1854年に奉行所の許可を受け、茶屋を設けたのが岩惣のはじまり。
離れの客室風呂以外にも「日の出湯」と「月の湯」という名の2つの大浴場があり、ともに単純弱放射能冷鉱泉である「若宮温泉」がひかれている。