大切な人に贈りたくなる
良泉

まるで川から湧き出す湯に浸かっている気分になった。湯船の底に砂が敷き詰められているのである。その名も「砂湯」。足元の岩盤から直接源泉が湧いているため、砂を敷き詰めたという。
佐賀駅の北20キロ、標高200メートルの山峡にひっそりと佇む「古湯温泉」は、2千年前に不老長寿の薬を求めた秦の徐福が発見したと言われる。時は流れ江戸中期、古湯村の庄屋・稲口三右衛門がその湯で傷を癒す鶴を発見。そこが現在の「砂湯」であり、「鶴霊泉」という屋号の由来となった。

11年前、3代目の小池典洋さんが宿を継いだ時、鶴霊泉の前に「鶴の恩返し よみがえりの宿」という冠名をつけた。そもそも不老長寿を求めて発見された湯である。それを”よみがえり”と表現するところが上手い。それ以上に憎いのが”恩返し”と名付けたこと。大切な人への感謝を告げる恩返しの場として使ってもらいたい、と考えた。たとえば、長年連れ添った妻に感謝の気持ちを込めて夫がこっそり予約する。その宿泊時、巨大モニターを備えた「恩返しルーム」で、要望があればスタッフがサプライズムービーまで準備してくれるのだ。そのスタッフはもちろん、すべてのゲストを”恩返し”というひとつの想いでもてなす。
その湯に浸かった時、大切な人のことを思い出し、数多の感謝を心に刻みたくなる。それこそが、名湯のひとつの証かもしれない。

Text by Kundo Koyama
Photographs by Kei Sugimoto
鶴の恩返し よみがえりの宿 鶴霊泉
- 〒840-0501 佐賀県佐賀市富士町古湯875
- TEL : 0952-58-2021
- URL : https://kakureisen.com/
- 営業時間:11時〜14時最終入館(日帰り入浴)
料金:一般 ¥1,000、子ども ¥500