湯道百選

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神奈川・足柄下郡

彫刻の森美術館 森の足湯

THE HAKONE OPEN-AIR MUSEUM MORI NO ASHIYU

彫刻になる絶景の足湯


いまや全国各地にある足湯を、美術館として初めて設置したのが箱根にある「彫刻の森美術館」だった。日本屈指の名湯である箱根に存在し、広大な敷地を歩き回って鑑賞する野外美術館⋯⋯、ここに足湯を設置することは、実に理にかなっている。しかもその足湯が、開館55周年を記念して大きくリニューアルされ、魅力が増したのだ。

リニューアルのポイントは二つ。まず、これまで彫刻を鑑賞しながら浸かっていた足湯の向きを変更。箱根の山々を借景として、大自然を眺めながら足湯に浸かれるようになった。新しく命名された「森の足湯」という名にふさわしい環境である。

小田急電鉄の箱根湯本駅からクルマで約20分。1969年に開館した「彫刻の森美術館」は自然と芸術の調和を目指してつくられた、国内最初の野外美術館。約7万㎡の広大な敷地の至る所にアート作品が配置。

画像提供:彫刻の森美術館

もう一つは、足湯に使用した素材。彫刻でも使われる石に注目し、国内外の異なる産地の石を15種類集めて組み合わせた。大きいもので4トン。なかにはアンモナイトがそのまま埋まっている原石もあるので、色や模様を楽しむことができる。

赤い石は「ロッソ ガズビーラ」、灰色は「ルナパール」で、どちらもイタリアの御影石を使用。

そして肝心の湯がこれまた文句なしにいい。5本の源泉をブレンドしたナトリウム塩化物泉で温度は42℃。心地よい風に吹かれながら絶景の山々を眺めていると、10分とたたないうちに額に汗が滲んでくる。彫刻で心を潤し、足湯で体を癒す。ここに足を浸けたら最後、誰もがその心地よさに動けなくなり、彫刻のようになる。つまりあなたも、彫刻の森美術館の作品の一つになってしまうのである。


Text by Kundo Koyama
Photographs by Alex Mouton

彫刻の森美術館 森の足湯