風呂屋が生きがい。
(林勝郎さん談)
昔は農家をしていました。60歳で息子に仕事を譲り、やることがなくなったので、温泉を掘ろうと決めまして。それで生まれたのが、黄金温泉です。農家をしていたときに、冬になると地熱で雪が溶けていることが印象に残っていて、掘れば温泉が湧くのではないかと長年考えていたのです。若い頃は農家と兼業で建設の仕事もしていたので、自分で基盤整備を出来ることも大きかったですね。
結局、実際には550メートル掘って温泉が湧きました。その最中は本当に出るかどうか、出てもお客さんに来ていただけるようになるのか……やはり不安はたくさんありましたね。しかしうまくいかないことがたくさん起きて、試行錯誤をすることの大切さもあらためて学びましたし、まだ誰もやっていないことをやることこそが本当の幸せかもしれない、という気づきがありました。実際にやったからこそ、いま温泉にお客さんが来て、いろいろな話をしてくれて……その時間こそがいまの自分の生きがいであると感じています。
いまは年間で、6、7千人のお客さんに来ていただいています。うちの営業は5月から10月まで。冬は休みます。わたしはあと、人生の余暇を楽しむだけですし、お金ももう、そこまで必要ではないので。自己流で蕎麦を打っていますが、来年からは蕎麦の営業は土日と祝日だけにするかもしれません。すべてを自己流で、ひとりでやっているので維持も大変ですが、できる限り続けていきたいと思っています。
Text by Chako Kato
Photographs by Alex Mouton, and Yohei Murakami
黄金温泉
- 〒048-1323 北海道磯谷郡蘭越町黄金258-1
- TEL : 0136-58-2654
- 料金:400円(日帰り入浴のみ)
営業時間:10:00~21:00(無休)
※冬季閉鎖 11月1日~4月30日