湯道百選

54.5
宮城・気仙沼市

鶴亀の湯

TURUKAMENOYU

日本一漁師を大切にする町


2019年7月、宮城県気仙沼の市場前に「鶴亀の湯」が開業した。主なお客さんは、港町である気仙沼を支える漁師たち。気仙沼を“日本一漁師さんを大切にする町”にしようと目指して開かれた、地元では唯一の早朝から営業している銭湯だ。

前身の「亀の湯」は、2011年の東日本大震災で被災。一時休業を経て復活をしたものの、復興に関した工事の影響で廃業し、明治から続いていた131年の歴史に幕を閉じた。
 その中で「鶴亀の湯」を立ち上げたのは、小野寺紀子さんをはじめとする一般社団法人 歓迎プロデュースの女性たち。「亀の湯」の廃業後、漁師たちがタクシーで乗り合いをして遠くのスーパー銭湯へ出かけている状況に疑問を抱き、地元の助成金や寄付金、クラウドファンディングなどで資金を集め、「鶴亀の湯」を開いた。

「銭湯はもちろん初めてなので、わからないことだらけでしたが、周りの人の助けも借りてなんとかやってこられました。開業した当時は地元の人にはあまり興味を持ってもらえなかったのですが、今では水揚げの方々も、立ち寄ってくれるようになりました」と、小野寺さん。

左から、加藤広菜さん、発起人の小野寺紀子さん、店長の根岸えまさん。

鶴亀の湯は、気仙沼市場前のトレーラーハウスの商店街「みしおね横丁」内にある。

「気仙沼はもともとごちゃごちゃした港町。震災のあとは新しくて立派な建物が増えましたが、あえてごちゃごちゃした空間にしたくて、みしおね横丁はウッドデッキで作りました」

営業は朝の7時から。すぐ隣には「鶴亀食堂」があり、朝風呂を浴びたあと、朝食にもありつける。

「『今年で引退するつもりだったけど、こんなにいい場所ができたなら、あと2年くらいは頑張ろうかな』と言ってくださった漁師さんがいらっしゃって、すごく嬉しかったですね。今はコロナで難しいですが、本来は漁師さんと一般の人が混ざり合って、ごはんが食べられる場所なんです。コロナ以前は、観光で来た女子大生たちが、その魚を獲った漁師さんと一緒になって、普段聞けないような漁師さんのお話を聞いたりして。漁師さんたちも、自分が獲った魚を目の前で美味しいって食べてくれるので、とても喜んでいました。もともと、観光客と地元の人、漁師さんの三者が交わる場になれれば、という理想があったので、これからもそういう場所になっていくといいなと思います」

「鶴亀食堂」では、漁師の募集・就業の相談も受け付けている。


Text by Chako Kato
Photographs by Alex Mouton

鶴亀の湯

  • 〒998-0037 宮城県気仙沼市魚市場前4-5みしおね横丁
  • TEL : 0226-25-8834
  • URL : https://kesennuma-tsurukame.com
  • 時間:07:00〜15:00
    定休:日曜日
       ※銭湯は冬季休業あり。事前にお問い合わせください。
    料金:大人440円
       中人(小学生以下)140円
       小人(未就学児)80円
       ※漁船員の方は、問屋さんから配られる風呂割引券があれば240円になります。

JR気仙沼駅からクルマで約10分の場所にある気仙沼市魚市場。朝7時から営業する市場の前にあるのが「鶴亀の湯」だ。一般入浴も可能だが、漁船員を優先。銭湯の番台の役割も担う「鶴亀食堂」には、漁師と観光客が入り混じり、交流の場になっている。元気な声と笑顔が訪れる人を、あたたかく迎える。