湯は、
日常の雑念を浄化する。
湯には、ケをハレにする力がある。心にまとわりついた日常の雑念を瞬く間に浄化し、晴れやかなる安らぎの境地に誘ってくれる。
東京のど真ん中に存在するその究極の装置が「アマン東京」かもしれない。挟土秀平の土の芸術に迎えられてエレベーターに乗り込み、天空の宮殿へ。6層を吹き抜けにした和紙の行燈を天井に用いたロビーは、訪れた者を威圧することなく優しく包み込む。
33階に位置する「アマン・スパ」内にある温浴施設のコンセプトは「東京の銭湯」。地域の伝統文化をホテルづくりの根幹に置く世界最高峰のラグジュアリーホテルに拍手を送りたくなった。海外のゲストが多いにもかかわらず、銭湯さながらにカランとシャワーを低い位置に設定。水によって心身を清める古代神道の「禊」を意識して「かけ水」の場所を設け、湯桶と椅子は檜にした。日本人が見過ごしていた「日本の魅力」が、世界に通用するセンスでここに具現化されている気がした。
ただし海外のゲストのことを慮れば、湯加減も東京の銭湯に倣う、というわけにはいかない。「アマン・スパ」の浴槽の温度は38度。しかしこのぬるさこそが、この場所で光るのだ。東京のビル群を眼下にぼぉーっと眺めながらぬるい湯に浸かっていると、次第に柔らかな雲に包まれているような感覚になってくる。いつの間にか心は空っぽになり、無垢なる感性が新しい刺激を受け入れる準備を始める。
天空に浮かぶ銭湯は、すべての創造者が定期的に訪れるべき、発想のオアシスなのである。
Text by Kundo Koyama
アマン東京
- 〒100-0004 東京都千代田区大手町1丁目5-6 大手町タワー
- TEL : 03-5224-3333
- URL : https://www.aman.com/ja-jp/resorts/aman-tokyo
- ・宿泊料金:¥113,850〜
(デラックスルーム 1泊1部屋料金)
・アマン・スパ営業時間:8:00〜22:00
(※温浴施設の利用は、宿泊者と一部スパメニュー利用者のみ。)
アマン初の都市型ホテルとして2014年にオープンした「アマン東京」。高層ビル内にわずか84室が設けられ「静寂のサンクチュアリ」がテーマになっている。合計2,500㎡にもおよぶウェルネス施設、アマン・スパには、フィットネスジムや30mプール、ヨガスタジオ、ピラテススタジオも備えられ、東京で営業するホテルにおいて最大級の大きさとなる。