湯道百選

27.5
広島・尾道

guntû

極上の入浴時間。

「せとうちの海に浮かぶ、ちいさな宿」ことガンツウは、1泊から3泊4日で瀬戸内海の名所を周遊する宿泊型客船。2017年10月の就航以来、ガンツウでしか体験できない瀬戸内海の絶景、食事、癒しの時間が話題を呼び、旅好きはもちろん多くの人憧れの的になっている。アメリカのニューヨーク・タイムズが発表した「2019年に行くべき52カ所」では7位に瀬戸内の島々が選ばれ、ガンツウも紹介された。

ガンツウという耳馴染みのない言葉は、瀬戸内海に生息する“イシガニ”が由来。青い甲羅が特徴で、小さなからだに似合わず、頑丈な網をハサミで切ってしまうほど強い力を秘めたカニだという。身は少ないものの、味噌汁や鍋に入れると美味しい出汁がとれるこのイシガニを、地元の人は親しみを込め「ガンツウ」と呼んでいる。小さなカニのように、滋味深く、永く愛されるようにと想いを込めて、船にも同じ名前が付けられた。

船は広島県尾道市のベラビスタマリーナから出航。大きく分けて、宮島などを巡る西回りと、直島などアートスポットを巡る東回りの2つのコースがある。出航後はどの港にも着岸せず、夜は沖に錨を下ろして停泊をする。島を訪れる際は、船に搭載されている小型船に乗って移動をする。



朝の散歩で宮島へ上陸し、厳島神社に朝6時半の開門直後に訪れた。
境内にはほぼ先客がいない中、荘厳な雰囲気を心ゆくまで味わうことができる。

部屋数は全部で19。一部屋しかない「ザ カンツウスイート」には露天風呂、「テラススイート」には内風呂も備えられている。ガラス張りの浴室で海を眺めながらの入浴という、まさにここでしか入れないお湯に浸かれる。さらにスパエリアにはエステや整体の用意もあり、檜風呂では、建築家の堀部ほりべ安嗣やすし氏がこだわった、ドライミストのサウナで体を癒せる。

海の上であることを忘れそうになりながら、瀬戸内のうつくしさや素晴らしさを堪能できる。非日常的な空間の中で、日常的な入浴という行為を普段以上に楽しめるひと時は、この上なく贅沢な時間だろう。


Text by Chako Kato
Photographs by Alex Mouton

guntû

  • 〒720-0551 広島県尾道市浦崎町1364-6
  • TEL : 0120-489-321
  • URL : https://guntu.jp/
  • 2泊3日間/ 1室2名利用の場合の1名あたり47万5000円~ 110万円(税・サ込、食事込) ※航路、プラン、客室によって異なる

全19室の客室は4種類。全室が海を見渡せるテラス付きのスイートルーム。木の優しい温もりに包まれた船内には、優しくゆったりとした時間が流れている。
瀬戸内の新鮮な野菜や魚介をつかったお食事も魅力のひとつ。メインダイニングの奥には、6席限定の鮨カウンターがあり、目の前の海、せとうちで揚がる旬の魚を、思う存分堪能できる。