湯は、街に楽園をつくる。
最近、銭湯の存在価値が見直されてきた。コアな銭湯ファンに加え、経営者の世代交代をきっかけに設備が改善されたことで若者たちがその魅力に気づき始めたのだ。
その魅力とは、まず心地良さ。マイナスイオンたっぷりの空間で広い湯船に浸かれば、身も心も癒される。さらに銭湯は人を集める場であり、コミュニケーションの場。人々は誰かと語らいたくてここに集まり、何かを発見して幸せを得る。そんな現代銭湯のお手本が高円寺の「小杉湯」である。
創業は1933(昭和8)年。唐破風屋根の重厚な建物はそのままに、変わり風呂を備えた現代的な銭湯にリニューアルされている。浴槽は全部で4つ。名物のミルク風呂にジェット風呂、やや温めの泡風呂、そして水風呂。特にこの水風呂が素晴らしい。地下90メートルから汲み上げた井戸水は掛け流しのため常に清潔で、15度〜16度という絶妙の冷たさ。この水風呂の完璧さから、小杉湯は熱い湯と水風呂を行き来する「交互浴」の聖地となった。熱い湯に3分、そして水風呂に1分というローテーションを3回以上繰り返せば、血行が良くなり、交感神経と副交感神経が刺激されて自律神経が整う。この交互浴こそ、湯道における最も基本的な作法と言っても過言ではない。
そして小杉湯の最たる魅力は、スタッフの素晴らしさに尽きる。銭湯を街のコミュニティースペースにしたいと願うオーナーと、銭湯の魅力にとり憑かれて番台に座るようになったイラストレーターの塩谷歩波さん、そしてボランティアで運営を支える銭湯好きの若者たち。彼らの情熱が至福の湯を沸かしている。併設されたギャラリーの予約は3年先まで埋まっているという。ここは高円寺の楽園なのだ。
Text by Kundo Koyama
Photographs by Alex Mouton
小杉湯
- 〒166-0002 東京都杉並区高円寺北3丁目32-2
- TEL : 03-3337-6198
- URL : http://www13.plala.or.jp/Kosugiyu/
- 営業時間:15:30-25:45(日曜は朝8時より営業)
定休日:木曜日
入浴料金 大人460円、中人180円(小学生)、小人80円(幼児)