湯道百選

102.5
京都・京都市

長者湯

CHOUJAYU

家族で繋ぐ京の灯火


長者湯の創業は大正6年。100年以上、京都に暮らす人々の憩いの場として親しまれてきた。2023年10月にはサウナを新設しリニューアルオープン。三代目の間嶋正明さんから息子の健太さんへと経営を引き継ぎ、一家で切り盛りをしている。

脱衣所には柳行李が置かれ、風呂上がりにゆっくり過ごせるようにと、鯉が泳ぐ風流な坪庭も。100年の時の厚みが随所に見られる、古きよきという言葉がしっくりくる銭湯だ。現在の営業は深夜0時まで。コロナ禍でも終業時間を変えなかったことが功を奏し、若い客層も増えた。昼間は昔からの常連客で賑わい、夜には大学生がサウナを楽しみにやって来るそうだ。

3代目の間嶋正明さん。

そんな長者湯の営業は午後3時10分から始まる。一見、半端に思える時間にも、お客さん達と歩んで来た歴史が隠されている。
「もともと3時半からだったんです。そうすると、お客さんが25分頃から店の前で待ってはるから、親父が『もう入ってもらうわ』って3時25分に開けて。それが3時20分、3時15分……どんどん早くなっていって。常連さん達は、『わてらが早く来てるから、お父さんは早く開けてくれはったな』と。親父はほんまに真面目で、お客さんを大事にすることに関してはすごかった」

義父にあたる二代目のことを正明さんはそう思い返す。お客さんのために清掃は徹底的にすること。坪庭や玄関の唐破風など古いものもきちんと残すこと……二代目が大切に守ってきたものは、正明さん、そして健太さんへとしっかり受け継がれている。先代たちの背中を見て育ったからこそ、健太さんもサウナの新設に踏み切り、長者湯を続けていくことを選んだのだろう。


豊かな銭湯文化が息づく京都でも、時代の波に抗えず姿を消す老舗も少なくない。京都の銭湯の伝統、上長者町に暮らす人々への思い、そして間嶋さん一家の歴史……長者湯という一軒の銭湯にはさまざまなものが詰まっている。井戸水を沸かした湯に浸かり、サウナと水風呂を堪能すれば、その一端にふれることができるはずだ。


Text by Chako Kato
Photographs by Alex Mouton

長者湯

  • 〒602-8263 京都府京都市上京区上長者町通松屋町西入ル須浜東町450
  • TEL : 075-441-1223
  • URL : https://1010.kyoto/spot/choujayu/
  • 料金:大人¥510 / 6〜12歳¥160 / 0〜5歳¥60
    ※2025年4月から料金が変更。
    →大人¥550 / 13〜15歳¥400 / 6〜12歳¥200円 / 0〜5歳¥100
    営業時間:15時10分~24時
    定休日:火曜日