一丸となって守る、
町の湯。
日本有数の温泉街である愛媛県松山市の道後温泉。シンボルでもある重要文化財の道後温泉本館は2019年に始まった保存修理工事の最中であるが、一部で営業は続けられている。現在の道後温泉はその本館をはじめ33の旅館が軒を連ねる。18本の源泉があり、源泉掛け流しの湯を楽しむことができる。
道後では昭和から、「分湯」のシステムで湯が供給されている。温度の異なる源泉は全部で5箇所ある「分湯場」に集められ、一定の温度に調節されたのち、それぞれの旅館や浴場に送られる仕組みだ。旅館ごとに所有する分湯の権利を代々受け継ぐ形で営業をしている。ちなみに、第4分湯場のみ立ち入りが可能で、湯が集められる様子の見学が可能になっている。
道後温泉では温度を管理する人を「汽缶士」と呼ぶが、この重要な任務を担うのはなんと5人の松山市の職員。365日、24時間体制で道後の湯を見守っている。気候によってお湯の温度を変えるなど細かな調節を行う、道後温泉の番人であり、縁の下の力持ちでもある。町が一丸となって道後の湯と文化を守っているのだ。
愛媛の、そして日本の宝である道後温泉。本館の保存工事は2024年の末に完了を迎える予定。町の人々の手に支えられながら、どんなふうに新しく生まれ変わるのだろう。
Text by Chako Kato
Photographs by Kei Sugimoto
道後温泉別館 飛鳥乃湯泉「特別浴室」
- 〒790-0842 愛媛県松山市道後湯之町19番22号
- TEL : 089-932-1126
- URL : https://dogo.jp/onsen
- 営業時間:6時~22時(事前予約制)
料金:¥2,040(一組使用料)+大人¥1,690
聖徳太子がご来浴した言い伝えがある道後温泉。本館の保存修理工事に伴い、2017年に別館として建てられたのが「飛鳥乃湯泉」。
本館に残る襖絵には白鷺が描かれている。白鷺が傷を癒やしていたという言い伝えから、道後温泉のシンボルになった。