あるがままの湯を、
自由に楽しむ。
鹿児島県霧島市はいくつもの温泉郷を有する、湯に恵まれた土地だ。そのうちのひとつ、妙見・安楽温泉郷では、坂本龍馬とお龍が新婚旅行で立ち寄ったことで知られる塩浸温泉や、格調高い旅館が名を連ねる妙見温泉など、個性豊かな湯の世界が広がっている。いわゆる旅館文化も盛んな一方で、人の手が入らないありのままの温泉を味わえる“野湯”も、温泉好きの人々のあいだでは人気だ。
塩浸温泉龍馬公園から離れ、山道を下ること数分で姿を表すのが、霧島きっての野湯である「竹林の湯」。いつ、誰がその名前を付けたのかはわかっていないという。同じように、誰がつくったかわからない、岩のくぼみを活かした天然の湯船。野湯であるがゆえに、その歴史についてはわからないことも多い。しかし、野性味あふれる湯を愛する人たちが、連綿とこの場所を守り、受け継いできた、ということはよくわかる。
あるがままの温泉ゆえに、どのように対峙して、楽しむのかは、浸かる人次第。日常の中で、ささやかな冒険気分を味わえるのも、野湯の魅力のひとつだろう。
Text by Chako Kato
Photographs by Kei Sugimoto
竹林の湯
- 〒899-6507 鹿児島県霧島市牧園町宿窪田
- 営業時間:無休
料金:無料
国道223号線沿いの竹林を下りると温泉に。入り口には誰が設置したのか不明の門がある。温泉の下を流れるのは天降川。川沿いに多くの温泉があり、坂本龍馬がかつて新婚旅行に訪れた塩浸温泉もそのひとつ。
源泉から浴槽にかけての岩が赤茶色に変色しているのは長年の温泉成分によるもの。かけ流しの炭酸泉。