入浴作法と「湯長制度」。
530年に開湯した那須温泉「鹿の湯」は栃木県では最も古く、関東では熱海、草津、伊香保と並ぶ古い源泉の歴史を誇る。江戸時代には各所から大名が訪れ、あの松尾芭蕉が「おくのほそ道」の旅で足を踏み入れた記録も残されている。
源泉はおよそ63℃。41、42、43、44、46、48℃の温度の異なる浴槽が並んでおり、好みの湯を選んで入浴できる。もともとは混浴だったが15年程前に廃止された。女湯に48℃の浴槽はないが、代わりに大勢で入れる岩風呂がある。
腰まで1分、胸まで1分、首まで1分の入浴を繰り返す短熱浴が効果的で、のぼせや吐き気を防ぐため、入浴前にひしゃくで大人はおおよそ200回、子どもはおよそ100回、ひざを湯のふちに近づけ、頭を下げてお湯を静かにかぶる「かぶり湯」が推奨されている。
「かぶり湯がいつから始まったのか定かではないんですよ。うちのお湯は硫黄泉なので硫黄が肌にまとまりつくというか、なかなか体温が抜けなくて、湯あたりをされる方も多いです」
那須温泉株式会社 常務取締役の薄井和夫さん。薄井さんの話では、鹿の湯では昔、「湯長」なる人がいたという。
「昔は湯長さんの掛け声でお湯に入ったり、上がったりしていたんです。いまは毎日1時間ごとにお湯の温度を測りに行って、その時に湯あたりしている人がいないかチェックをしています。基本、常連さんはかぶり湯をしていますね。大体かぶる人は100回くらいしています」
1390年の歴史を感じられる鹿の湯。湯長の制度はなくなっても、入浴を楽しむ人を見守る目線は残されている。
Text by Chako Kato
Photographs by Alex Mouton, Koyuki, and Shikanoyu Official
鹿の湯
- 〒325-0301 栃木県那須郡那須町湯本181
- TEL : 0287-76-3098
- URL : http://www.shikanoyu.jp/
- 「鹿の湯」の名の由来は、傷ついた鹿がこの湯で傷を癒やしていたことから。1936年建造の建物は、昭和初期にタイムスリップしたかのような気分を味わえる。泉質は硫黄泉で、白濁した湯が特徴。女湯の温度は、最高46℃まで。石鹸やシャンプーは泡立ちにくく、滑る危険もあるので使用禁止である。日帰り湯治のような使い方をする人が多いが、周辺に宿も多くある。
時間:08:00〜18:00
定休:年中無休(但し、設備改修のため、休日有り)
料金:大人 500円 小人(小学生)300円 幼児無料
湯治体験半日券 土日祭日1,500円 / 平日1,200円
回数券(5枚つづり)2,000円