混浴文化を守り続ける
秘湯。
八甲田連峰の主峰・大岳の西麓、標高およそ900メートルの高地にある酸ヶ湯温泉。農閑期は湯治客、初夏から秋の終わりまでは八甲田山の登山客、冬は山岳スキーを楽しむ人と、1年中賑わいを見せている。歴史は300年前まで遡れるほど古く、元々の名前は「鹿湯」。怪我をした鹿が温泉で傷を癒したという逸話が由来だが、その後、お湯が強い酸性であることから「酸ヶ湯」へと名前が変わったのだとか。版画家の棟方志功も酸ヶ湯を気に入り、湯治の傍らたくさんの作品を残したという。
およそ10日を目安に行う湯治が人気だが、毎年7月の土用の丑の日に開催される「丑湯祭」にもたくさんの人が訪れる。丑三つ時(午前2時)に入浴をすると1年間健康でいられるという言い伝えがあり、真夜中でもお湯に浸かる人の行列ができるほどだという。
300年の歴史があるということは、その分、お湯を支えてきた人がいるということ。現在は、湯守5年目である石澤秀行さんが酸ヶ湯温泉を支えている。
「休憩も含めて、朝の4時から夜9時半まで勤務しています。朝、お風呂を開けて、お湯の温度を測って……。掃除は基本的に週1回ですが、人がいっぱい来た時はもっと頻繁に。全部の掃除が全部終わるのは、夜中の1時頃ですね」
普段からアメリカ、中国、韓国、台湾など、海外からのお客様も多いという。混浴の温泉は今は日本でさえ珍しくなっているため、海外の観光客では尚更だろう。青森産のヒバで作られた大浴場は160畳もあり、「ヒバ千人風呂」と呼ばれている。しかし、本当に千人も入れるのだろうか?
「せいぜい、350人くらい。昔の人は大げさだったのかな」と、石澤さんは笑いながら教えてくれた。
酸ヶ湯温泉
- 〒030-0197 青森県青森市荒川南荒川山国有林酸湯沢50番地
- TEL : 017-738-6400
- URL : http://www.sukayu.jp/
- 料金:一般1,000円(立ち寄り・タオル付)
時間:07:00〜18:00(うち、08:00〜09:00は女性専用時間)
青森空港から車で1時間、青森県の中央にそびえたつ八甲田山に酸ヶ湯はある。手負いの鹿が湯に浸かり、驚くスピードで傷を癒したことから「鹿湯」が名前の由来という説もある。卓越した効能と豊かな湯量などが認められ、1954年に「国民保養温泉地第1号」に指定された。泉質は、酸性の強い硫黄泉で、療養に適した温泉。版画家の棟方志功もこの湯を愛し、湯治をしながら作品を制作した。