湯は、もうひとつの
ふるさとになる。
我がふるさと、熊本県の天草市に「ホテルアレグリアガーデンズ天草」というリゾートホテルがある。有明海を見下ろす高台に建ち、窓を開ければ心地よい海風が頬を撫でる。穏やかな内海なので波の音はほとんど聞こえて来ない。時折、漁船のエンジン音が眠気を誘うように遠くから届く。
今から7年ほど前、そんな素晴らしいロケーションに恵まれたホテルの最上階の一室をプロデュースして欲しいと頼まれた。そして完成したのが、この部屋である。厳密に言うとスイートルームではないので、「トップテラス501」という名前をつけた。その名の通り、絶景の海が迫る広いテラスが最大のウリである。
(少々型は古くなってしまったが)バング&オルフセンのオーディオやシモンズのベッドなど、自分の別荘を作るつもりでワガママを叶えてもらった。しかし個人的に最も気に入っているのは、テラスに設置されたジャグジーである。ここに泊まる時は、言うまでもなく湯三昧の贅に浸る。昼間は空と海の境界線が分からないほどの青を眺めながらぬる目の湯でぼぅっとする。夜は湯の温もりに包まれながら満天の星空に心震わせる。この湯に浸かると、不思議と心が安らぐのだ。
「ふるさと」とは「いちばん素直になれる場所」だと常々思っている。とするならば、この丸い浴槽こそ、自分にとってのふるさとの中のふるさとに他ならない。
あなたが自分の「ふるさと」と呼べる湯は、どこにあるだろうか?
Text by Kundo Koyama
Photographs by Alex Mouton
ホテルアレグリア
ガーデンズ天草
- 〒863-0001 熊本県天草市本渡町広瀬996
- TEL : 0969-22-3161
- URL : https://hotel-alegria.jp/
- 【料金】(2名1室利用時の1名2食付料金)
・トップテラス501 ¥33,000〜
・スタンダード ¥15,400〜