湯は、宿の華となる。
ある著名な建築家からこんな話を聞いたことがある。「日本の建築家が世界で指名されるようになったきっかけは、お風呂なんだ。」つまり、日本の建築家は風呂の設計が上手いというのだ。日本の風呂文化がそれだけ成熟している証しと言えよう。
京都に魚谷繁礼という建築家がいる。京都の拙宅をリノベーションする際、いい風呂を作ってくれそうな建築家を探した。そして辿り着いたのが魚谷さんだった。その素晴らしい作品はいずれ紹介するとして、魚谷さんの最新作が京都の祇園八坂に誕生した「そわか」というスモールラグジュアリーホテルである。
およそ100年前に建てられた数寄屋造りの料亭を大改修&増築して、全23室の和風ホテルを作り上げた。美しい緑を眺められる部屋や開放的なバルコニーのある部屋、茶室付きの部屋など、全ての客室の間取りが異なる。檜や鋳鉄、セラミックなどの素材も違えば、露天あり、はたまた室内に、など浴槽の設置場所も様々だ。ただ一つ共通しているのは、「23室全ての風呂が心地良い」ということ。
今回宿泊した104号室は、メゾネットの客室で、大胆にも二階の居間の一角に浴槽が設えてある。湯に浸かれば、中庭に面した窓から見える青紅葉が眩しい。身体が温まったら作務衣風の部屋着に着替え、その傍らで読書でもどうだろう?眠くなったら、中庭から吹き込む風を頬に感じながらそのままお昼寝タイム。そして目が覚めたらまた湯に浸かる。そんなことを繰り返したくなる部屋だ。
どこも似たり寄ったりの宿が多い中、ここは明らかに違う。「湯は、宿の華」に他ならないから。
Text by Kundo Koyama
Photographs by Alex Mouton
そわか
- 〒605-0821 京都府京都市東山区下河原通八坂鳥居前下ル清井町480
- TEL : 075-541-5323
- URL : https://sowaka.com/
- 料金:¥50,000~/室(税・サービス料別)