湯道百選

110.5
鹿児島・熊毛郡屋久島町

samana hotel Yakushima / 尾之間温泉

samana hotel Yakushima / ONOAIDA ONSEN

知られざる温泉の島


屋久島に「温泉」のイメージがある人はあまり多くないかもしれない。実際は源泉掛け流しの温泉も多く、その個性もさまざま。浜辺に湧き出る「湯泊ゆどまり温泉」、海岸の岩の間から湧き出す「平内海中温泉」と、波の音を聞きながら浸かれる野趣あふれる温泉。屋久島空港からアクセスのいい「縄文の宿 まんてん」などもあり……屋久島ならではの温泉で旅の疲れを癒す人もたくさんいると言う。

「samana hotel Yakushima」の「温泉スイート」にある円形の展望風呂

そんな中、「屋久島温泉」と名のついた湯を有するのが「samana hotel Yakushima」。屋久島温泉はホテルからおよそ200m離れた源泉から引かれた温泉で、現在はこの施設でのみ入浴できる。源泉の温度は34.8℃。アルカリ性単純泉で肌への刺激が少なく、トロトロした湯ざわりが特徴だ。「温泉宿ホテル総選挙2024 美肌部門」で全国2位にランクインするなど、名実ともに美肌の湯として人気が高い。ホテルには大浴場、露天風呂があり、日帰り入浴も可能。
 ここだけでも十分満足できるが、温泉好きの心をさらに躍らせるのが「温泉スイート」。4部屋すべてがオーシャンビューで、名前の通りバスルームは円形の展望風呂付き。源泉掛け流しの屋久島温泉に浸かりながら、朝焼けに輝く海、あるいは月に照らされた海をひとり占めできるまさに屋久島の特等席。リゾートホテルの優雅な心地良さと、屋久島の自然の雄大さを一度に体験できる湯だ。
「屋久島に温泉があるということを皆さん知らないので、もっと温泉で注目してもらえるように、屋久島町全体で盛り上げていければと思います」とホテルのマネージャー八巻昌宏さんは話す。「samana」とは、サンスクリット語で「調和」を意味する言葉。今後はホテルの枠を超えて、温泉と屋久島の町がより調和していくための起点の場になっていくかもしれない。

壁画が印象的な尾之間温泉

さらに八巻さんからは「屋久島の共同浴場はアットホーム。特に女性は、地元の人と観光客が和気あいあいと話をしていることが多いそうですよ」という話も。観光客からも人気が高い温泉のひとつが、屋久島町の「尾之おのあいだ温泉」。およそ350年前に発見されたと伝わる温泉で、登山口の近くにあるので山帰りの人もよく利用するそうだ。尾之間温泉に関しては、地元の人からも「熱くて入れない」「すぐに出る」という言葉を何度か聞いた。無色透明の単純硫黄泉で源泉は49.5℃。浴槽には石が敷き詰められていて、そのあいだから源泉が湧き出してくる。加水をしないため、朝いちばんの浴槽の湯はなんと47℃近い。夕方になると45〜43℃と少し下がるものの、それでも熱い。観光客が熱さに戸惑ったり、入浴の仕方に迷ったりしていると、地元の常連さんが入り方を教えてくれる風景をよく見かけるという。地元の人と観光客が交流をする場にもなっているようだ。

個性豊かな湯で賑わう屋久島。温泉を中心に据えた旅をしてみると、あたらしい島の魅力が見えてくるかもしれない。


Text by Chako Kato
Photographs by Kei Sugimoto

samana hotel Yakushima / 尾之間温泉

  • 〒  

♨samana hotel Yakushima
住所:鹿児島県熊毛郡屋久島町尾之間136-2
電話:0997-47-2011
料金:宿泊料金 23,500円~(1泊2名1室利用時・朝食付)
   日帰り入浴 大人1,800円/小人900円
時間:15:00~19:00(受付は18:00まで)
WEB:https://samanahotel.jp/

 ♨尾之間温泉
住所:鹿児島県熊毛郡屋久島町尾之間1291
電話:0997-47-2872
料金:大人300円/小人:150円
時間:7:00〜21:00
定休:月曜日
WEB:https://yakukan.jp/spot/7013.html