愛がつなぐ湯のぬくもり

日本有数の温泉地である草津には「もらい湯」の文化がある。かつては、草津の住民が宿の湯に浸からせてもらうことを指したが、現在は観光客が共同浴場を使うことを意味している。草津に19ある共同浴場のうち、もらい湯ができるのは「地蔵の湯」「白旗の湯」「千代の湯」の3つ。共同浴場はそれぞれの地区の住民が自ら管理や清掃を担当しており、いずれも利用は無料だ。
「温泉は昔から自然と湧き出ているものですから。観光客の皆さんに楽しんでいただけたら」と、草津町役場・温泉課の担当者は話す。観光客数が年々増えていることも相まって、温泉の管理から工事の調整まで、温泉課は日々忙しい。現在は5人で切り盛り。取材で訪ねた日も、点在する共同浴場をあわただしく行き来していた。

共同浴場の中でも、「地蔵の湯」は特に観光客が多い。温度を44度以下になるよう調節しているため、熱い湯が苦手な人でも入りやすいそうだ。他の共同浴場と同じく、管理は地区の人が担当。朝8時から開くため、担当者は毎朝7時までには清掃を終えているという。

「地蔵の湯」の一帯は、近年「裏草津」として整備されたエリアでもあり、足湯、温泉の中に手を浸す手洗乃湯、温泉の蒸気を浴びる顔湯など、草津の温泉をより気軽に楽しめるスポットが並んでいる。

昨年度は400万人を超える観光客を迎え入れた草津町。そこに暮らす人は、およそ6000人。町にさまざまな改革をもたらした黒岩信忠町長や、温泉課、女将をはじめとする旅館で働く人、地域の人……その一人ひとりの温泉を愛する力が、名温泉地としての草津を支えているのだろう。
Text by Chako Kato
Photographs by Alex Mouton
地蔵の湯
- 〒377-1711 群馬県吾妻郡草津町草津299
- TEL : 0279-88-0800
- URL : https://www.kusatsu-onsen.ne.jp/kankou/1099.php
- ・営業時間:8:00~22:00
・料金:無料
・アクセス:湯畑より徒歩3分