湯道百選

34.5
千葉・長南町

ちょうなん西小の湯

CHONAN-NISHISHO NO YU

地域活性の灯となる湯。


千葉県長生郡長南町。2017年に廃校した小学校の校舎が、1日1組限定の貸切の宿泊施設として生まれ変わった「ちょうなん西小」だ。株式会社マイナビ地域創生が運営を担っている。代表取締役社長の横尾隆義さんにお話を聞いた。
「マイナビとしてもともと、I・J・Uターンなど地方に人を送り込む事業を展開していました。人と仕事のマッチング事業は成立するのですが、それだけだとなかなか地方に人が戻らないという現状がありました。地域の方々からすればおこがましいかもしれませんが、マイナビ自身が中に入り地域を元気づけたい!と思ったのが、ちょうなん西小を立ち上げたきっかけでした」


もともとは120年以上の歴史がある小学校。貸切は20名からで、最大84名までが利用できる。保育園や幼稚園のお泊まり会や母親たちの集まり、大学のゼミ合宿や卒業旅行、企業研修など、ありとあらゆる客が訪れ、リピーターも多いという。
「スポーツ合宿に同伴する親御さんにとっては、通常は炎天下で応援をする中、ここならクーラーのきいた音楽室からグラウンドを見渡せますし、カフェもあるので喜ばれます。意外だったのが、小学生のお子さんにとってはいつも通っている学校とほとんど同じだから面白くないのかなと思っていたのですが、普段は学校内であれしちゃダメ、これしちゃダメというたくさんのルールの中で過ごしているので、ここで思う存分はしゃげるのが、楽しいみたいです」

数々の楽器に懐かしさが蘇る2階の音楽室。グラウンドが見渡せる。
 
大人数を収容できる多目的ホールもあり、ここで研修が行われることが多い。

教室をリノベーションした浴室は檜風呂。壁も檜のこだわりようだ。一人用と大勢で入れる浴槽の2種類があり、通常は宿泊者のみ利用可能だが、年に2回、地元感謝デーとして地域の人々へ開放をしている。
「校庭を公園として開放していて、地元の子育て中の方からは、安心して子どもを遊ばせられると喜ばれています。子どもが遊んでいる間、お母さんはカフェにも行けますし、雨の日は屋内のキッズルームや無料開放している図書館もあるので、そこで遊ぶこともできます」


地域の人に無料開放している図書室。町で唯一の図書館となった。

災害があった際は避難所としても活用されている。外から人を呼び込み、また地域の活性化にもしっかりと結びついている「ちょうなん西小」は、今後の地域創生の一つの礎になるかもしれない。


Text by Chako Kato
Photographs by Alex Mouton

ちょうなん西小の湯

  • 〒297-0145 千葉県長生郡長南町佐坪1348-1
  • TEL : 0120-154-244
  • URL : https://chonan-nishisho.jp/
  • 【料金】
    1泊1名¥4,400〜(20名以上/税込)
    1泊1団体¥110,000〜(20名未満の場合/税込)
    ※お風呂は、宿泊者のみ利用可

基本的にお風呂の利用は宿泊者のみだが、年2回は感謝デーとして、地元の方向けにオープン。昨年の台風時には避難所としても機能。広いお風呂だけでなく、綺麗な水回りや充実した設備で、多くの人がここで難を逃れた。宿泊施設として運用されるようになってから、周辺にカフェが4店舗オープンするなど、地域全体が活性化している。