湯の記をはじめるにあたり…
茶が道になったように、日本特有の入浴文化も道になるかもしれないと直感し、それを湯道と名付けた。自分が生きているあいだにそれが結実するとは思っていない。遠い未来の記憶に「湯道」が刻まれたならそれでいい。自分の人生の足跡がその一助になるのなら本望だ。
湯道を世に問い始めてから2年が過ぎた。まずは作法らしきものを作ってみたものの、「湯道は作法にあらず、湯に向かう姿勢なり」という結論を得た。形ではなく心。湯に浸かり何を思い、何を得るかが、大切なのだ。形はいずれ自然と生まれてくるに違いない。とするなら、湯道の本質にたどり着くには、この国に存在するいい湯に浸かり、そこで閃いた文言を積み重ねてゆくことが一番の近道だと思った。
日本にはたくさんの素晴らしい温泉が存在する。江戸から続く銭湯という文化も守らねばならない。そして各家々にも他の国にはない特有の機能を備えた心地良い風呂が設えられている。あらゆる湯に浸かり、思惑を巡らせることで湯道が何たるかを私は知ることになるであろう。
平成30年
小山薫堂
湯は、
暇をつくる場である。
98
宮城・大崎市
- 百年ゆ宿 旅館大沼
- 大沼伸治さん
湯は、イノベーションの
装置となる。
97
東京・豊島区
- 妙法湯
- 柳澤幸彦さん
湯は、
絶望を希望に変える。
96
大阪・豊能郡
- 山空海温泉
- 奥野正幸さん
湯は、風を馳走にする。
95
長崎・雲仙市
- 薫風の湯
- 福田 努さん
湯は、人を笑顔にする。
94
長野・野沢温泉村
- 大湯
- 河野 健児さん
湯は、人を幸せにする。
93
静岡・熱海市
- 山田湯
- 山田 松子さん
湯は、友を呼ぶ。
92
三重・伊賀市
- 一乃湯
- 石井 皓也さん
湯は、和の豊かさを
かたちにする。
91
静岡・伊豆市
- あさば旅館
- 浅羽 一秀さん
湯は、
地域文化の結び目となる。
90
佐賀・嬉野市
- 和多屋別荘
- 小原 嘉元さん
湯は、生きている。
89
大分・別府市
- 別府温泉保養ランド