湯道百選

92.5
三重・伊賀市

一乃湯

ICHINOYU

町の湯をつなぐ営み。


2023年の夏、一乃湯の経営は「ゆとなみ社」に引き継がれた。ゆとなみとは、“湯”と“営み”を掛け合わせた言葉。「銭湯を日本から消さない」をモットーに、日本各地の銭湯の運営を受け継いで、次世代へと繋ぐ活動をしている。高齢化や後継者不足により継続が難しくなる銭湯が多い中、一乃湯はまだまだ活気がある中の継業という、めずらしいパターンだった。


「前の大将である中森さんは家族経営でずっとやられていましたが、『体が動くうちに新しいこともやってみたい』と、僕たちに前向きなバトンタッチをしていただきました」
そう語るのは、一乃湯の運営を任された石井皓也さん。前経営者の中森さんはオリジナルグッズを作ったり、飲食店を呼んで銭湯でイベントを開催したりと、型にとらわれないアイデアで一乃湯を愛される銭湯に育て上げた。その精神と、空間づくりのテーマに置かれていた「日本の暮らし」をなるべく変えないようにしながら、石井さんは創業からもうすぐ100年を迎える銭湯を切り盛りしている。


休日は城下町散策を兼ねて他県からも人が訪れるが、平日は常連客がほとんど。「あたたかい人が多いですね」と、石井さん。お客さんと言葉を交わす時に、銭湯の仕事のやりがいを特に感じるという。
 かつては20軒以上の銭湯があったという伊賀市上野も、いまでは一乃湯があるのみ。三重県全域でも、その数は年々減っている。
「すべての銭湯を残すのは難しいかもしれない。でも、ひとつでもその町で愛される銭湯が残るといいなと思います。前の大将がそうしていたように、いろんな人が集まって、笑顔で帰ってくれるような場所にしていきたいです」


Text by Chako Kato
Photographs by Kei Sugimoto

一乃湯

  • 〒518-0848 三重県伊賀市上野西日南町1762 
  • TEL : 070-3352-2440
  • URL : https://yutonamisha.com/
  • 営業時間:14時〜23時
    定休日:木曜日
    料金:一般470円


    ※許可を得て撮影しております。営業中は脱衣場、浴室の撮影はできませんのでご留意ください。