”銭湯の申し子”が守る
愛される老舗銭湯の日常。
「電気湯」の現当主である大久保勝仁さんは10月10日生まれ。「銭湯の日」が誕生日ということもあり、「自分は銭湯の申し子なんですよ」と笑顔で言う。東京都墨田区曳舟の地で100年続く「電気湯」。名前の由来は創業当時はまだ珍しかった電気で湯を沸かしていたから、と、代々大久保家には伝わっているそうだ(ちなみに、現在はガスで沸かしている)。
「電気湯」が、地元の人にとってどんな場なのか? その答えを目の当たりにするのは、営業が始まる数分前。一番風呂を目指す地元の人々が、開店を今か今かと待ち受けて、「電気湯」の付近に小さな人だかりを作るのだ。午後3時になりいよいよシャッターが開くと、皆、大久保さんと挨拶を交わしながら、「電気湯」の暖簾をゆっくりとくぐる。
「すごく大きいスイカとか、3時台のお客さんはよく差し入れもしてくれます。それから週1回来てくれる、小学生の集団もいますね。毎日一緒にお風呂に入っていたり、ご近所付き合いをしていると、『銭湯をなくしてたまるもんか』という意地が生まれてきますね」
「電気湯」が町にもたらしているのは、「銭湯」を超えた、かけがえのない交流の場であることがわかる。
営業中にお客さんと一緒に風呂に入り、話をするのも大久保さんの楽しみのひとつだそうだ。さらに、浴場にスクリーンを広げ、洗い場に座りながら映画鑑賞をする会を催したり、年齢が近い仲間たちと会議をしたりと、銭湯の空間を最大限に活かしながら様々な企画も実現させている。
地元に根付いた銭湯であり、そして、新しい企画やアイデアが生まれる場でもある。大久保さんならではのバランス感覚で、どちらかの機能に偏ることなく、「電気湯」は今を生きている。冗談めかして「銭湯の申し子」を名乗っている大久保さんだが、案外それは本当なのかもしれない。
Text by Chako Kato
Photographs by Alex Mouton
電気湯
- 〒131-0046 東京都墨田区京島3丁目10−10
- TEL : 03-3610-8998
- URL : https://denki-yu.studio.site/
- 定休日 土曜日
営業時間 15:00〜23:00(最終受付22:30)
大人 480円
小学生 180円
乳幼児 80円
サウナ 200円(タオル1枚付)
京成電鉄押上線の京成曳舟駅から徒歩5分。
開店前から常連客が外に並び、街の人に愛されていることがわかる。
常連客と入浴することも日常で、まさにご近所付き合いの延長的な感覚。
ときに120℃にも達するサウナと水風呂も併設している。