湯道百選

114.5
京都・京都市

京都銭湯 門前湯

KYOTOSENTO MONZENYU

父が遺した湯の財産


京都で朝から営業している銭湯は実は数が少なく、朝風呂が叶わないことも多い。朝からひと風呂浴びたい……そんな人の救世主となるのが、京都市北区の「門前湯」だ。2025年10月から平日の朝風呂をスタート(休日も同時間より営業)。きっかけは、店主の吉本誠さん自身の「朝風呂に入りたい」という思いからだった。
「京都のお風呂屋さんはお昼の3時頃から開いているところがほとんどで、『平日の朝はお客さん来てくれへんで』という感じだった。でも、飲んで帰った時とか朝からお風呂入りたい時はあるじゃないですか。そう思っている人はいるんちゃうかな、と」


 はじめはほとんど反響がなかったそうだが、SNSでの発信を続けた効果もあり、客数もだんだん増えてきた。夜勤を終えた人やタクシーの運転手、朝風呂の習慣がある人などが訪ねて来るように。やはり需要はあるものだと吉本さん自身も確信を強めたそうだ。

門前湯の3代目である吉本さんは一級建築士でもある。祖父の代から続く門前湯を受け継いだのは2010年のこと。2代目の父親が病に倒れて以来、設計事務所を経営しながら銭湯の切り盛りをする生活が始まった。子どもの頃から銭湯を継ぐつもりはまったくなく、また両親から将来について何か言われることも一切なかった。
「何を聞いても『お前の好きにしろ』。でも今の立場になってみると、本当はやって欲しかったんかなあと感じますね」

門前湯を運営する吉本夫妻。

 継いだ当時は迷いもあったが、徐々に気持ちが変わっていった。
「親父が亡くなった時、向かいのおっちゃんが『お父さんはお風呂屋さんという財産を残さはったなあ』と言ってくれて」
 風呂屋は財産。その言葉を聞き、その財産を活かすも活かさないも自分次第だと、気が付いたという。
「今は活かせているんじゃないかと思っているんですけどね」

建築士、銭湯店主、さらに京都浴場組合の理事長も務めるなど、忙しく働く毎日。多様な仕事や立場を経験してきたからこそ、銭湯を受け継ぐことの重みを人一倍感じている。


「今の若い人から『継がせてほしい』と言ってもらえるような経営状態であったり、店の設えであったり……継いでもらえるようなものにしとかないとあかんのちゃうかな、とも思います。3つの仕事のうち、別にひとつしかやったらあかんということはないじゃないですか。2人の娘には『継いでくれ』ではなく、こういうやり方もある、と可能性を提示しています」
 3代に渡り京都の街で受け継がれてきた門前湯。きっと門前湯ならではのかたちで、未来へ続いていくだろう。


Text by Chako Kato
Photographs by Alex Mouton

京都銭湯 門前湯

  • 〒603-8216 京都府京都市北区紫野門前町29
  • TEL : 075-492-2314
  • URL : https://1010.kyoto/spot/monzenyu/
  • 料金:大人¥550 / 小学生¥200
    営業時間:9時~12時 / 15時~26時(月〜水、金〜土)、9 時〜26時(日)
    定休日:木曜日