湯のため、人のため。
長野県北部に位置する野沢温泉村の名物は、もちろん「温泉」。シンボルである「大湯」を含む共同浴場の「外湯」が13箇所ある。外湯は観光客に開放されており、村の貴重な観光資源でもある。古くから続く「湯仲間」の制度により、村の人々の手で管理されてきた。
「地区の人たちがお金を出し合ったり、持ち回りで掃除したりしながら湯を守っています。泉質もいいので、自分たちだけで楽しんでいるのはもったいないだろうということで、観光客に開放したのが今の外湯のかたちになっています。もともと家にお風呂がない時代からやっているので、自分の家のお風呂という感じです」
外湯や湯仲間制度について、「野沢温泉企画」代表の河野健児さんが教えてくれた。温泉は村の宝であり、自分の家の風呂と同じように管理をするのが当たり前なのだ。
野沢温泉村には、さらに温泉にまつわる名所がある。たとえば、野沢温泉村の住民のみ立ち入りを許されている「麻釜」。90℃近い湯を湧出する源泉で、かつて刈り取った麻を湯だまりに浸して処理をしていたことが名前の由来。いまでは地元の人々が山菜や野菜を茹でるなど、麻釜は野沢温泉の台所として日常的に使われている。温泉で茹でることで食材の甘みが増すとのこと。温泉がどれほど村の人々の生活に根付き、身近なものであるのかがよくわかる。
河野さんに、野沢温泉村の湯を守ること、そして観光地としてはどんな場にしていきたいかを尋ねた。
「温泉が守られて、自分たちの暮らしが豊かになることで、その一部をコンテンツとして観光客に見ていただく。そのことで、野沢温泉村の人たちが楽しく豊かに生きていることを感じてもらえたら、普通の観光地とは違う一面を見ていただけるのではないかと思います。村の人が住みやすいことが大事なので、観光客が来た時に、非日常の文化として感じていただけるようにしていきたいです」
Text by Chako Kato
Photographs by Kei Sugimoto
大湯
- 〒389-2502 長野県下高井郡 野沢温泉村大字豊郷大湯
- URL : https://nozawakanko.jp/
- 営業時間:5時~23時(4月~11月)
6時~23時(12月~3月)
定休:年中無休