水の都・熊本で
入浴文化を再発見。
2023年4月、熊本県熊本市の旅館「松屋別館」の大浴場が「Luxury Sauna & Spa 湯屋水禅」へと生まれ変わった。手がけるのは、1954年創業、まもなく70周年を迎える松屋本館グループ。ブライダル事業も手掛ける熊本で著名な老舗旅館ながら、ここ数年は旅館のあり方について考える機会が増えていたという。2016年に発生した熊本地震、そしてここ数年はコロナ禍に見舞われ、何を軸に大切にして生きていくべきか……思いを巡らせる中、3代目女将の頭に浮かんだのが旅館の隣にある「水前寺成趣園」だった。細川家が代々守り続けてきた、熊本県のシンボルである大切な場所。熊本の地に継承されてきた文化、そしてそれを守り続ける人々の精神をもっと広く知ってもらいたい─その入り口となる場として、そして日本文化ならではの価値を再発見できる場として考え出されたのが、「湯屋水禅」だった。
回遊式のサウナと大浴場による「大湯」、プライベートサウナと貸切風呂の「浴司」をはじめ、入浴によって身と心を清め、癒される空間が広がる。旅館再生、リノベーションに多くの実績を持つ熊本の設計士・大森創太郎氏が設計デザインを担当した。熊本らしさを感じられる仕掛けもたくさんある。浴場やサウナの水風呂では、阿蘇外輪山から水前寺成趣園へとつながる水脈から汲み上げる天然地下水を使用。生活用水のほぼ100%を地下水でまかなう、水の都である熊本市ならではの贅沢だ。さらにサウナ石には阿蘇山の麓の溶岩石、浴場ではヒノキの浴槽やクスノキの洗面台を設けるなど、とにかく天然素材を使うことにこだわったという。
慌ただしい日常の中で、心をととのえ、休める場所になってほしい─そんな女将の想いが実を結んだ、あたらしい湯の拠点。水の都・熊本の入浴文化を再発見できる場としても、今後ますます注目を集めていくだろう。
Text by Chako Kato
Photographs by Alex Mouton
湯屋水禅 「浴司」
- 〒862-0950 熊本県熊本市中央区 水前寺5丁目 5-1 松屋別館 2F
- TEL : 096-213-1331
- URL : https://www.matsuyahonkan.com/suizen/
- 料金:(平日) ¥10,000(120分)~
(土日祝)¥11,000(120分)~
利用時間:7:00〜24:00 (最終予約)22:00
※貸切・完全予約制
最大定員5名・中学生以上利用可能
JR水前寺駅より、徒歩12分。
プライベートサウナ「浴司(よくす)」、大浴場&サウナ「大湯(おおゆ)」、コワーキングエリア「会所(かいしょ)」も併設。宿泊者以外に、日帰りの利用も可。