湯道百選

71.5
岡山・鏡野町

奥津荘

OKUTSUSO

何度入っても疲れない
秘境の湯で休息。

一棟建ての離れ「清閒亭」。露天風呂付きの客室で、奥津の湯を源泉かけ流しで楽しめる。大浴場「鍵湯」にちなみ、浴槽の形は鍵穴型。

日本でも有数の足元湧出泉を有する「奥津荘」には、本物志向の温泉好きが多く訪れるという。湧きたての湯はこの上なく新鮮で、温度も42度とちょうどいい。加水や加温、循環は一切せず、湧出は毎分247Lと、湯量も豊富だ。同じ湯でもそれぞれ趣きが違う4つの浴場が準備されているため、楽しみも4倍。最も人気があるのは「鍵湯」。「立湯」は名前の通り、立ったまま入浴ができるほど浴槽が深い。美しい山々を見ながら湯に浸かれる貸切専用風呂の「川の湯」。そして、ステンドグラスとタイル張りの内装がレトロな貸切専用風呂「泉の湯」。24時間入浴が可能なため、きっと4つすべてを堪能する宿泊客も多いだろう。
「うちの湯は特徴がないのが特徴ですね。匂いもなければ、刺激もない……何度でも入れて、1週間続けて入っても全然疲れないんです」と、奥津荘の主人である鈴木治彦さんは言う。

左:奥津荘の主人、鈴木治彦さん
右:湯道家元、小山薫堂

奥津荘は昭和2年に創業した。鈴木家はもともと、岡山市で料亭を営む家系だったが、大正末期、料亭の常連だった政治家・犬養毅氏のすすめにより料亭を畳み、奥津の地で旅館を経営することになった。鈴木さんは4代目だ。高校卒業後は福岡の調理師専門学校に入学。いくつかのアルバイトを経て、スポーツ用品会社で約3年働き、27歳の時に奥津に戻ってきた。異業種で得た経験やマーケティングの知識は、宿の運営を任された今も役立っているという。奥津荘のこれからについては、「もっと寛いでいただけるような空間やサービスを提供できる宿にしたいと考えている」と教えてくれた。


現在、奥津温泉には8軒の旅館がある。最寄りの津山駅からバスに1時間ほど揺られて辿り着く、まさに秘境にある温泉街だ。この地が持つ魅力を、「素朴さや、ありのままであるところではないでしょうか。すべての旅館を合わせてちょうど100床、つまり奥津温泉には100人しか泊まれないんですね。このエリアは完全に休息に来ていただくような、リフレッシュするための場になると思います」と鈴木さんは語る。

奥津荘はあと数年で創業100年を迎える。100年目の奥津荘、そして奥津温泉は、どんな休息を得られる場に進化しているのだろう。


Text by Chako Kato
Photographs by Kei Sugimoto

奥津荘

  • 〒708-0503 岡山県苫田郡鏡野町奥津 48
  • TEL : 0868-52-0021
  • URL : http://okutsuso.com
  • <宿泊>
    ¥28,600~
    (2食付き1泊1室2名利用時の1名料金)
    <日帰り入浴>
    受付:10:45~14:30(最終受付14:00)
    料金:大人(中学生以上) 1,000円(税込)  小人(3歳以上) 500円(税込)
    定休日:休館日および定期メンテナンス日(不定期) 
    ※休館日については事前にお電話にてご確認下さい。

岡山空港からクルマで1時間半。客室は清間亭・聴泉亭・梅・桜・楓・柊・銀杏・紅葉の8室。露天風呂付きの離れなど、様々なタイプの部屋がある。鍵湯、立湯、泉の湯、川の湯と、4つの湯がある。※泉の湯、川の湯は貸切風呂。