湯道百選

66.5
岐阜・中津川市

ランプの宿 渡合温泉

LAMP NO YADO DOAI ONSEN

“何もない空間”で味わう
極上の湯。


景勝地として知られている岐阜県中津川市の付知峡つけちきょう。岐阜と長野の県境にあり、森林浴の森日本100選、岐阜県の名水50選にも指定されている。ここに佇む秘湯が「ランプの宿 渡合温泉」。創業は江戸時代、木造の建物は大正13年築と歴史のある温泉宿だ。一歩宿に足を踏み入れると、たくさんのランプが出迎えてくれる。なぜ、「ランプ」なのか? 宿にはなんと電気が通っておらず、携帯電話の電波も届かない。自家発電をしているものの夜には真っ暗になるため、インテリアとしてではなく、ランプは必需品なのだ。もちろん個室にはコンセントもなく、冬は豆炭コタツで暖をとる。滞在中、昼間は滝を巡ったり、魚釣りをしたりと自然に触れ合い、夜は山菜や川魚の夕飯を堪能。夜はランプの灯りのもとでゆっくりと過ごす。


江戸時代から続く「ランプの宿」の現当主は6代目の今井俊博さん。山仕事と旅館業を並行していたが、先代から忙しさが増して、現在は宿の仕事に専念している。それほど“何もない空間”−日常のさまざまな当たり前を手放さざるを得ない空間を求めている人は、多いのかもしれない。
 「ランプの宿」では温泉ももちろん人気。浴槽は木曽の五木のひとつである高野槙で、薪で湯を沸かす昔ながらの五右衛門風呂タイプだ。高野槙は水に強い性質で、現在の浴槽は20年以上使用しているとのこと。温泉は、かつて一帯に暮らしていた山師や炭焼き職人、湯治客たちが浸かりに来ていたそうだ。時代によって人々の暮らしや山との付き合い方が変化しても、川のせせらぎを聞きながら湯に浸かり、癒される気持ちはきっと同じ。ランプの柔らかい灯りに包まれるひとときは、そんなことを教えてくれる。

※取材時は、特別に茶会を開催した様子を撮影。
「ランプの宿」で通常提供しているものではありませんので、ご留意ください。


Text by Chako Kato
Photographs by Tomohiro Matsunaga

ランプの宿 渡合温泉

  • 〒508-0421 岐阜県中津川市加子母渡合
  • TEL : 090-1092-8588
  • URL : https://www.doaionsen.jp/
  • 料金:13,460円〜(1泊2名利用時 1名料金)/日帰り入浴(要予約)500円
    営業:4月1日〜11月30日(冬季は休業)

岐阜県の付知峡にひっそりとたたずむ秘湯の一軒宿。
電気が通っておらず、テレビも冷蔵庫も携帯電話も使えない。
宿への連絡は、衛星電話を使う。客室は6畳~10畳の和室で、夏は冷房が要らず、寒い季節は豆炭コタツで暖まることができる。
部屋にはコンセントもテレビもないので、ゆったりとした時間を堪能できる。