湯道百選

62.5
神奈川・川崎

志楽の湯

SHIRAKU NO YU

都心から30分、
縄文の風が息づく温泉。


JR南武線矢向駅から歩いて5分程、住宅街の一角に「志楽の湯」はある。敷地内に一歩足を踏み入れると、森の奥にいるような静けさに包まれる。
 「都会に古里」をコンセプトに作られた「志楽の湯」では、「露天風呂」、天然木がそびえ立つ「御柱蔵石風呂おんばしらくらいしぶろ」、「勾玉湯・蔵石風呂」、120年前の味噌樽の板を使った「味噌樽風呂」、「海底洞窟蒸し風呂」、そして自然木に囲まれたドライサウナも楽しめる。地殻変動などの影響で地中に閉じ込められた「化石海水」の湯で、ミネラルや草木の成分を豊富に含んでいる。さらに、湯の成分が体に吸収しやすい「高張性」と呼ばれる泉質であるため、デトックス効果も高い。

手前が勾玉風呂、奥に見えるのが御柱蔵石風呂。

創業者である柳平彬やなぎだいら さかんさんは、特に事前調査も行わずに掘削したところ、なんと地下1,300メートルで、温泉が湧き出てきたのだという。「志楽の湯」が建つ土地は、かつては柳平さんの工場が稼働していた。柳平さんは元々、半導体検査やコンプレッサー部品を生産する工業会社の経営者だったが、時代の変化に連れて、工場は閉鎖。繁盛していた近隣の工場も次々と同じ道を辿り、日本のものづくりのパワーが減ってしまうことを懸念した。

工場跡地を使い、新しい仕事の誘いもあったが、すべて断った。「もう一度、自分の手で日本のものづくりを元気にしたい」という強い想いが芽生えたためだった。
他にはない、けれど、日本らしい温泉を作るために、「縄文時代」をテーマに据えることに決めた。縄文土器の造形の素晴らしさから、日本のものづくりの原点は、縄文時代にあったのではないかと考えるようになったためだった。柳平さんは、旅館経営のプロである故・後藤哲也さんに「縄文時代の息づかいを都会で実現させたい」と、監修を直談判。見事、それは達成されたのだった。

東京の都心からも30分程度で訪ねることができる「志楽の湯」。縄文時代をテーマにした湯は、どんな心地がするのか。ぜひ、体と心を解きほぐしながら、体感してもらいたい。

レストランや休憩処も併設されており、湯から出た後も「都会の古里」を味わうことができる。

志楽の湯

  • 〒212-0024 神奈川県川崎市幸区塚越 4-314-1
  • TEL : 0120-650-711
  • URL : https://www.shiraku.jp/
  • 営業時間: 10時~24時 無休
    料金:
    大人(中学生以上)平日990円(税込) 土・日・祭日1,170円(税込)
    子供(5歳以上)平日600円(税込) 土・日・祭日805円(税込)

JR南武線矢向駅から徒歩5分。オーナーの柳平彬さんが住宅街の工場跡地を縄文天然温泉としてオープンさせた。平屋建てで延べ床面積は約1700m²。まがたま形状の水風呂、120年前に製作された味噌樽を湯船にした「味噌樽風呂」など、ユニークな風呂を数多く設置している。川崎矢向は縄文の森だった場所。露天風呂に配置された木や石は、一つひとつの形状や場所にまでこだわっている。こうした努力により、古の時代の「縄文の森」の雰囲気を取り戻した。