”整う”を追求する
自然とアートのサウナ。
1300年の歴史を有する佐賀県の「武雄温泉」。温泉街から少し離れた場所にある御船山の西麓に広がる「御船山楽園」は、江戸時代後期から続く庭園で春には桜やツツジ、秋には紅葉でにぎわう。この歴史ある庭園にあるのが、「御宿 竹林亭」。15万坪の広大な敷地に、客室はわずか11室という贅沢な宿。神聖な山としてあがめられてきた御船山の麓で、豊かな自然と柔らかなお湯に癒される。
代表の小原嘉久さんが竹林亭を継いだのは2007年、32歳の頃のこと。宿で最も重要視しているのは、やはり広大な自然との調和だ。
「建物のガラスを一面に使うなど、自然を部屋の内側まで取り込めるようにしました。自然に恵まれているからこそ、なるべく外へ目がいくような造りにしています」
生まれも育ちも武雄の小原さん。代表に就任して以来、宿では細かな修繕を続けている。小原さんにとって庭園は、子どもの頃の遊び場だった場所で、細かい地形まで頭の中にインプットされているという。思い入れのある地だからこそ、伝統を守りながら新しい挑戦を続けている。
そのひとつが、プロジェクションマッピングやデジタルアートを手がけるチームラボとのコラボレーション。2015年、庭園の池の水面に小舟や鯉が踊るプロジェクションマッピングが話題になった。以来、毎年御船山の自然と最先端のデジタルアートのコラボを続けている。2020年11月には、ついに常設となる「チームラボ 廃墟と遺跡:淋汗茶の湯」がオープンした。チームラボによる廃墟のアート群、茶の湯、サウナを堪能する体験型の展覧会だ。サウナは、全国のサウナ施設をランキングする「サウナシュラン」で2年連続グランプリを受賞した御船山楽園ホテルの「らかんの湯」。サウナで整った頭と身体でアートの世界に入り込むことができるなど、これまでにない経験ができる。
もともとサウナ好きだという小原さん。サウナに入り、頭の中を無の状態にしたあと、アイデアを考えることもある。
「江戸時代までは、湯屋と風呂屋が分かれていたことを最近知りました。当時の蒸気浴としてのサウナを取り入れながら、入浴という行為を”健康増進を目指すための場所”と再定義して、現代的な湯治場を目指していきたいです」
Text by Chako Kato
Photographs by Alex Mouton