湯は、
小さな命を優しく見守る。
那須に「二期倶楽部」が誕生したのは1986年。2本の川が流れる4万坪以上の敷地に展開された日本初のラグジュアリーリゾートは、いつか泊まりたい憧れの宿として多くのホテルラバーを魅了した。あれから35年・・・・二期倶楽部を創設した北山ひとみさんが原点に立ち返り、自然と文化芸術を融合させてつくりあげたカルチャーリゾートが「アートビオトープ那須」だ。このプロジェクトに関わったアーティストの名前を聞くだけでも、北山さんのセンスの良さと尋常ではないパッションを推測できる。
全体のアートディレクションを原研哉氏が手掛け、現代工芸家のアートが随所に散りばめられている。
石上純也氏の設計によるビオトープの森「水庭」を歩き、まずは心を鎮める。那須連山からの清らなる水が160個もの小さな池に流れ込み、たくさんの命を廻らせているのが分かる。本岡将シェフ率いる上質なレストランを囲むように点在する15のスイートヴィラは、建築家・坂茂氏の作品。ベッドルームから吹き抜けの空間を見下ろせば、温もりのあるリビングと贅沢なテラスが広がる。その片隅にある浴室は、可動式のあじろ扉によって全開放され、目の前の林と一体となる。
湯を張った石の浴槽にゆっくりと身体を沈め、目を瞑り耳を澄ます。紅葉した木々を揺らす風が音を奏で、時折、それに鳥のさえずりが混じる。小さな命(ビオ)がこの場所(トープ)で循環しているのがわかる。濁っていた自分の感性が、自然によって濾過されていく気がした。
Text by Kundo Koyama
Photographs by Alex Mouton
アートビオトープ那須
- 〒325-0303 栃木県那須郡那須町高久乙道上2294-3
- TEL : 0287-74-3300
- URL : https://www.artbiotop.jp/
- 料金:¥58,080〜(VILLAタイプ、1泊2食付き1名料金/税・サービス料込み)
那須塩原駅からクルマで30分、那須山麓の自然の中にたたずむリゾート。「来るべきアートのための小さな苗床」となるべく、美しいレジデンスとヴィラ、カフェ、スタジオなどで構成されている。吹きガラスなどのワークショップ体験に加え、那須の自然を感じるサイクリングなどのアクティビティも心地いい。自然とアートに癒やされ、感性を刺激される。