湯道百選

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三重・津市

火の谷温泉 美杉リゾート

HINOTANI ONSEN MISUGI RESORT

湯は、
心の不安をかき消す。


湯道にはどんな作法があるのですか?と、しばしば尋ねられる。湯の浴び方や浸かり方の作法らしきものをつくってはみたものの、それが湯を愛する妨げになってはいけない。幾ばくかの迷いを経て、最近はこう思うようになった。

「湯道は作法にあらず。湯に向かう心なり。」

形を気にするあまり、湯に浸かる時間がおざなりになってしまうより、自分なりに湯と向き合う最良の方法を見つけるほうがいい・・・
それが湯道の流儀なのだ。と自分に言い訳をして、三重県の火の谷温泉に向かった。というのも、ここには湯の神に叱られそうな魅惑的な風呂があるのである。


火の谷温泉の核となる創業88年の「美杉リゾート」は、単なる大型ホテルではない。「里山を遊ぶ」をテーマに、地元の体験型ツーリズムのハブとなることを目指し、農家民泊のプロデュースにも関わっている地域活性集団に他ならない。しかも温泉施設の中には上質なクラフトビール工場を所有。日本でも唯一無二の工場直送「ビール風呂」がここにある。季節ごとに種類の変わる火の谷ビールをナトリウム・炭酸水素塩泉に配合。ビール酵母と抗菌作用のあるホップ、そして炭酸の効果で血行が良くなり、しっとり滑らかな湯上り感が期待できる。

大浴場にある、温泉に本物のビールを配合した日本でも珍しい「ビール風呂」。
※Misugi Resort official photo

しかし今回の最大のお目当ては、20名でも入浴できる大きな貸切露天風呂。なんとここに、出来たてのクラフトビールを樽ごと持ち込み、湯に浸かりながら楽しむことができるのだ。仲間と一緒に極上の湯で汗をかき、風呂の中でキンキンに冷えた生ビールを飲む・・・これは誰もが理想とする幸せのカタチ。ソーシャルディスタンスを取りながら、気の合う仲間たちとほろ酔い気分で湯に浸かれば、コロナ禍の憂鬱はたちまち消えてしまうのである。


Text by Kundo Koyama
Photographs by Alex Mouton

※本記事は、入浴中の飲酒を推奨するものではありません。
入浴中の飲食ならびに飲食直後の入浴は、
体調次第で身体によくない作用をもたらす場合があり、
浴槽内事故につながる可能性があります。
くれぐれもご注意ください。

火の谷温泉 美杉リゾート

  • 〒515-3421 三重県津市美杉町八知5990
  • TEL : 059-272-1155
  • URL : https://www.misugi.com/
  • 宿泊料金:13,600円〜(1泊2食付き、2名1室の1名料金)
    貸切風呂:¥3,000(45分/税抜) ※メインビジュアルの風呂。
         ※ビール樽の持ち込みは、事前予約が必要。
    大浴場 :日帰り入浴も可。料金 1,000円(人/税抜)※夏季は1,600円(人/税抜)

自然豊かな美杉リゾートは、近鉄線、榊原温泉口駅からシャトルバスで25分の場所にある。良質な天然水を使用し地元の酒米や大麦・小麦も使う「火の谷ビール」は、国際ビール品評会で銅メダルを受賞する実力派。ラガーを中心に常時3〜4種類を若手兄弟2人が醸造する。ここでは新鮮なクラフトビールと上質な湯を同時に楽しむことができる。