湯道百選

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群馬・吾妻郡草津町

白旗の湯

SHIRAHATA NO YU

心までととのう熱湯


日本三大名湯のひとつに数えられる草津温泉。かつては来訪する70%が年配者ということもあり、昔ながらの温泉地というイメージが強かった。が、15年前に黒岩信忠町長になってから「100年先を見据えた新しい街づくり」をスタート。湯畑周辺の整備や温泉門の新設、そして女将たちが一致団結したことで、来訪者の70%が若い世代となり史上初の400万人を突破した。

JR長野原草津口駅からバスで約30分。2023年に竣工した温泉門は、長年の課題であった渋滞を解消するとともに、街のシンボル・湯畑へと続く温泉街への入口として新たな観光名所に。

草津には町民無料の共同浴場が19あるが、そのうちの三湯は観光客も無料で入浴することができる。中でも立地と泉質の良さから高い人気を誇るのが、湯畑の隣にある「白旗の湯」である。白旗という名称は、かつて源頼朝が浸かったことから源氏の白旗に由来するらしいが、実際に入浴すると白旗をあげたくなるくらいに熱い。一応、熱湯とぬる湯に分かれているが、実際はどちらも熱い。源泉は51℃。町役場温泉課の担当者は44℃以下を推奨していると言うが、温泉猛者たちによって
46℃は下らないだろう。湯に浸かりながら自己と対峙し様々な想いに耽ることが湯道の常であるが、ここではそんな余裕はない。熱さとの戦いで頭は空っぽ。しかし湯上がり後の風酔い(風に吹かれる時間)がなんと心地よいこと。サウナとはまた違う、身体だけではない心までととのった気分になるのだ。

老舗旅館で構成する「和風村」の女将たち。今夏、江戸時代に行われていた無病息災を祈念する「氷室の節句」を復活させた。

大正ロマンと昭和レトロの時を纏う草津温泉は、今、現代に疲れた若者たちで賑わっている。


Text by Kundo Koyama
Photographs by Alex Mouton

白旗の湯