湯道誕生の地、京都。
「湯道」の提唱者であり家元である小山薫堂さんが作り上げた湯室「馬鹿庵」。湯室の設計は、魚谷繁礼さんが率いる魚谷繁礼建築研究所が手がけた。数多くの京都の古民家をリノベーションしてきた魚谷さんから提案された3つの案は、いずれも浴槽が半露天の設計で、それは小山さんの理想にぴったりと合うものだったという。
湯道には「ひとりの慎み」という言葉がある。一人で湯に浸かる時でも作法を怠ることなく、礼儀を重んじる。人に見られていない時にこそ、湯へ向かう姿勢が試される……「道」の根底にある考えだ。一方で、湯室に人を招いて、楽しく食事をしたりお喋りをしたりする「湯会」の文化も提唱されている。実際に、小山さんは会社の新年会として湯会を開き、楽しんでいるそうだ。普通に食事会を催す以上に、人と人との距離を近づける力が湯会にはある、と感じているとか。半露天の湯室は、一人の入浴も、大勢が集う賑やかな場の入浴も、どちらも受け入れる余裕や懐の深さがある場と言える。
もともと「湯道」の誕生は、京都との縁が深い。小山さんは昔から京都が好きで、大学生の頃からよく足を運んでいた。歳を重ねるとともに、京都という街で様々な人や場所と出会い、知るうちに、入浴を「道」にすることをひらめき、挑戦してみたくなったのだという。
「京都という場所がなかったら、湯道そのものを始めていなかったかもしれない」と、小山さんは語っている。京都の歴史や文化の奥深さが刺激となって、湯道は生まれた、と言ってもいい。
湯への想い、そして京都という土地から受け取った影響や文化への尊敬がかたちになった「湯道」。その歴史はまだまだ始まったばかり。拠点である湯室から、どんな新しいアイデアが湧き出てくるのか……これからもどうぞ、お楽しみに。
Text by Chako Kato
Photographs by Kei Sugimoto
馬鹿庵
- 〒 非公開
- TEL : 非公開
- URL : https://yu-do.jp
- 京都某所に構えた湯室。建物は魚谷繁礼建築研究所によるもの。お湯を介し、人とのつながりをより深くする「湯会」の会場でもある。
7年前に始まった湯の旅は、徐々に仲間を増やし、映画化のほか、国内外での講演活動や展覧会など、活動の場を広げ、一般社団法人化も果たした。詳細は湯道文化振興会公式ホームページへ。
2023年公開予定の映画「湯道」についてはこちら。