『サ道』のはじまり。
540万の人口に対して、フィンランドには330万ものサウナがあると言われている。
日本の温泉施設の数はおよそ3000。日常に密着している・馴染んでいる、という言葉では言い表せないほど、フィンランド人にとってのサウナは、かけがえのないものであるとわかる。
今回訪れた「ソンパサウナ」は、フィンランドでも数が減ってきている公衆サウナのひとつ。一般人が建てたサウナ小屋が発祥だという。手工教育に熱心なフィンランドでは、学校で木工や編み物、刺繍などを実践的に学ぶため、物作りに長けている人が多い。一般の人が小屋を作るのもさほど困難なことではないそうだ(子どもが生まれると父親が自宅の庭に小屋を手作りする習慣もある)。
もちろんフィンランド語である「サウナ」。日本にその文化が広まったのは、遡ること55年前、1964年の東京オリンピックがきっかけと言われている。選手村につくられたフィンランド式のサウナが話題を呼び、全国にサウナ施設が次々つくられるなどブームが巻き起こった。施設数が増えるにつれ、サウナの中にテレビが置かれ、食事処も併設されるなど、本場とは異なる独自のサウナ文化も発達。数年前には初のサウナ専門誌「sauner」が発刊されたり、サウナの魅力を説いた漫画が流行したり、女性専用の施設もつくられるなど、日本人のサウナにかける情熱は、本場に負けず劣らず年々上昇しているようだ。
ちなみに、日本の「風呂」の起源は「室(ムロ)」。天然の洞窟や岩窟で自然の蒸気を利用した蒸し風呂、つまりサウナのようなものだったのではないか、とする説がある。もともと親和性があったからこそ、日本人はサウナに心地よさを感じ、惹かれるのだろうか。温泉が日本を代表する文化になったように、サウナもまた同じ文化の道を辿っている最中なのかもしれない。
Text by Chako Kato
Photographs by Alex Mouton
ソンパサウナ
- 〒 Sompasaarenlaituri, 00540 Helsinki, Finland
- URL : http://www.sompasauna.fi/
- 料金:無料
営業時間:24時間(無休)
地下鉄Kalasatama駅から工事エリアを通り、徒歩約20分。水は持参し、最初に来た人が自分でストーブを温め、最後の人が片付けて帰るというルールで運営されている。ヘルシンキの一般的なサウナは有料かプライベートだが、ここはパブリックで無料。現在は、大小1つずつのサウナ小屋と、海辺にテーブル、椅子、海に入る階段が設置されている。