湯道百選

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フィンランド・ヘルシンキ

ソンパサウナ

SOMPA SOUNA

湯は、文化の種を蒔く。

湯道とサ道(=サウナ道)・・・主軸を風呂にするかサウナにするかの違いはあれど、行き着く先にある幸福感は似ていると思っている。その関係性の深さをヘルシンキで実感した。
 そもそもフィンランド人は、ヨーロッパで最も日本人的な感性を持った国民だという。シャイで目立つことが苦手。時間を守り、清潔好きで、そして何より裸の付き合いをするという文化がある。フィンランド人にとってのサウナとは、日本人にとっての風呂同様、他者を慮りながらコミュニケーションを楽しむ場でもあるのだ。

そんなサウナ大国でも異色の存在として愛されているのがヘルシンキの「ソンパサウナ」である。24時間営業で入場料は無料。ただしシャワーもなければトイレもない。が、目の前には海がある。埠頭の突端に放置されていた小屋に誰かがストーブを持ち込んで勝手に始めた“元違法サウナ”なのだ。
その始まりは2011年。ファンの増加と共にボランティア組織が自然発生し、2年後には社団法人化された。さらにフェスティバルも開催されるようになり、ついにはヘルシンキ市も認めたことで、違法サウナは立派な観光名所となった。

今では、新たに2棟が建設され、ホームページも完成。しかし相変わらずトイレやシャワーは無く、常に移転先を探している。驚くことに、このソンパサウナにヘルシンキ市は文化勲章を与えたという。日頃から市民の良心を信じ、自主性を重んじて、面白そうなカルチャーを支援する行政の姿勢が素晴らしい。
 「風呂を愛する人々が自然に集い、新しいシティーカルチャーの種を蒔けたら・・・」と日本に似た国で思った。


Text by Kundo Koyama
Photographs by Alex Mouton

ソンパサウナ

  • 〒 Sompasaarenlaituri, 00540 Helsinki, Finland
  • URL : http://www.sompasauna.fi/
  • 料金:無料
    営業時間:24時間(無休)

地下鉄Kalasatama駅から工事エリアを通り、徒歩約20分。水は持参し、最初に来た人が自分でストーブを温め、最後の人が片付けて帰るというルールで運営されている。ヘルシンキの一般的なサウナは有料かプライベートだが、ここはパブリックで無料。現在は、大小1つずつのサウナ小屋と、海辺にテーブル、椅子、海に入る階段が設置されている。